ナザレンコ・アンドリー × 福田ますみ 保守派対談:LGBT問題をめぐる22,000字インタビュー

2022年1月末、都内某所で、在日ウクライナ人で政治評論家のナザレンコ・アンドリー氏と、『ポリコレの正体』(方丈社、2021年12月発行)の著者でノンフィクションライターの福田ますみ氏の対談が行われました。

対談は2時間半にも及びましたが、当サイトでは、対談の中心的なテーマであるLGBT問題に絞って掲載します。

※文章化に当たって、ご本人たちの同意を得た上で、言い回しなど一部に読みやすくするための編集を加えています。

1.マイノリティを利用する左翼勢力

福田ますみ(以下、福田):まず初めにお伺いしたいのですが、ナザレンコさんはツイッターでもLGBTに関して色々と発言されていらっしゃいますが、どうしてこの問題に関心を持たれたのですか?

ナザレンコ・アンドリー(以下、NA):正直言うと、私はLGBT問題に関心を持ったことがなくて、今も実は持っていないんですね。関心を持っているのは、「伝統的な家族を守る」ということです。LGBTの存在は子供の頃からずっと知っていたし、もしかしたら当事者と何度も会ったことがあるかもしれませんが、「そういう人たちだ」と思っていて、別に偏見もないんですね。

以前のLGBT活動家の主張は、「恋愛は自由だ」とか「同性愛者を差別するな」などというものでした。ただ、ヨーロッパから始まった最近の運動は、「同性婚を認めろ」とか「学校で低学年からLGBT教育をしろ」とか、町の中心地で変なパレードを行ったり、ほぼ裸の男たちが性的な道具を持って変な主張をしている。私は当事者に対しては今も怨みはないんですけど、一番腹が立ったのは、学校教育で「母」と「父」といった言葉を使うな、「保護者」とか「親1」などの言葉を使えという風潮になって…。だから、反LGBTではなくて、私たちの伝統的な生活を守りたくて、そういった問題に触れるようになりました。


福田:そうしたLGBT運動・プロパガンダの背後に共産主義の臭いを感じられたのかなと思ったのですが…

NA:それも間違いなくありまして、実はLGBT活動家も共産主義者も、「家族」というものを敵視する傾向があります。マルクス時代の共産主義の思想家が言ったように、「私有財産があるがために家族は存在しており、男としては、自分の遺伝子を受け継ぐ子孫に自分の資産を受け継いでもらいたいから、家族という制度を作った。もし私有財産がなくなれば、家族の必要性も必然的になくなる」といった考え方があります。

ソ連時代にも、「家族よりも共産党を愛することのほうが大切」といった教育も行われていて、例えば、パヴリク・モロゾフという若い人がいて、自分の父親が反共産主義的なことをしているのを秘密警察に密告した。そしたらお父さんが逮捕されてシベリア送りになった。彼はソ連時代には英雄として称えられた。「本物のソ連人だったら、家族よりも共産主義思想、もしくは共産党を大切にすべき」みたいなことを教育の一環としてみんな洗脳されていたんですね。

福田今のLGBT運動が家族解体につながるという考え方があって、それが共産主義と繋がりがある、ということですね。

NA:そうですね。実際に日本でも、誰がLGBT運動をしているかと言うと、やはり野党の人が多い。フェミニズムを推奨する人とLGBTを推奨する人と社会主義を推奨する人、大体同じ人物なんですね。例えば、杉田水脈さんが叩かれていた時も、(東京)オリンピックの時は森(喜朗)さんが女性に対する失言をして叩かれた時も、叩いている人は大体同じ共産党関係の人だったので、明らかに繋がっているんですね。

福田:ただ、以前の旧ソ連時代の社会では、同性愛者はかなり迫害されていましたよね?


NA:憲法違反ですね。実はレーニン時代は、性的解放が訴えられていたんですけど、その後のスターリン時代になってから一気に逆戻りしたというか、保守的な考え方になって、スターリン時代からソ連が崩壊するまでは、同性愛は刑法違反で、5年以下の懲役に処される罪でもあったんですね。


特に不思議に思うのは、今は共産党関係者とか共産主義者は、ソ連を称えながらもLGBTも褒め称えるんですけど、「あなたたちはスターリン時代にいたら、強制収容所に行ったぞ」って言いたいですね。いくら共産主義が家族を敵視しても、自然の家族のあり方というものからあまりに離れてしまうと、国家がもたなくなります。そこで、いくら共産主義者でも最終的には「伝統的な家族を大事にしましょう」ということに戻らなければいけなくなったと私は見ているんですね。


福田:今の立憲民主党の中にもゲイの議員さんがいましたね。そういう方たちが最初、10年以上前に活動を始めようとした時に、凄く(党内がLGBTに)冷淡だったと言います。「何を言っているんだ」と。その後、日本にLGBTブームが入ってきたら急に突然、「彼ら(LGBT)は日本では差別されている。人権を守らなければいけない」と、コロッと変わったみたいな。共産党だってもちろん、昔、自分たちが同性愛者を凄く嫌っていた歴史を分かっているはずなんですけど、やっぱりそこで昔のことを持ち出したら絶対ダメなんで、だから矛盾というか、ねじれたような状況があると思うんですが、なんか「LGBT擁護」ということで、日本の左翼も一致したような状況になりましたよね。

NA左翼としては、社会内の対立を煽ることが最終目的で、そのためにはあらゆるマイノリティ(少数者、少数派)を使いたがるんですね。

福田:私もまさにそう思って、今回のポリティカル・コレクトネスについての本(『ポリコレの正体』)を書きました。アメリカが凄くひどいですよね。「少数派の権利」と言って、わざわざ女性や、人種的・民族的マイノリティ、性的マイノリティ、社会の中の下層の人たちなど、全部集めて少数者の革命をやろうとしているんじゃないかとも思うんですね。

NA:そう思います。私も日本に住んでいるマイノリティの外国人なんですが、日本に来たばかりの頃は、左寄りの方(左翼)も接してきていました。その時は、最初から「日本にいるのは大変ですよね。文化も違うし、差別によく遭うでしょ?」みたいな結論が決まっているんです。

福田:そういうことを結構聞かれたんですか?


NA:日本語学校で、ですね。日本語学校は左寄りの人になぜか占領されていて、そこでマイノリティの話もされていたし、日本社会の中の差別問題についても色々学んだりして、被差別意識を植え付けようとしていた先生もいました。


福田:日本語学校って、そういう体質というか、そういうところがあるんですか?


NA:すべてではないと思いますが、私が通っていた学校でも、先生によってもだいぶ違いました。ただ、そういう先生も確実にいましたね。本当はみんな(留学生)、日本が好きで日本に来ているのに、日本の社会問題とか差別問題とか、歴史問題にあえて触れて、日本のネガキャン(ネガティブ・キャンペーン)をやっていた先生もいました。


さっきアメリカのポリコレの話があったんですけど、最初の質問が「どうしてLGBT問題に関心を持ったか?」ということでしたが、実際に関心を持っていなくても、ポリコレ文化を強制されてしまうんですね。例えば「会社では1割は必ず同性愛者でなければいけない」とか、「映画では何割か同性愛者を出さなければいけない」など。いくら関心を持たないようにしようとも、自分が慣れた普通の生活を送るだけでも「差別主義者」のレッテルを貼られ、マジョリティ(多数者、多数派)であるだけで罪悪感を抱かなければいけないという洗脳をされて…。

私も一応マイノリティのはずなんですけど、ツイッターで左翼に気に入らない発言をすると、彼らはよく「日本から出て行け!」とか、日本国憲法を批判したら、「日本国憲法が気に入らないなら、日本から出て行け!」と言ってくるんです。それは「お前たち(左翼)が闘っているヘイトスピーチじゃないか」と思って、それは「マイノリティに対するヘイトスピーチじゃないか」と言ったら、「いや、あなたはマジョリティに加担している『名誉日本人』だから、お前に何を言っても差別にならない」みたいな、訳のわからないことを言われていたんです。


女の人でもフェミニストに反論すると、「名誉男性だ」と言われて、女として認められないという(苦笑)。高市早苗さんもそうでしたが、左翼の人たちは、元々「国会議員の5割を女性にしなければいけない」とか、「女性の総理大臣になったら女性全体の地位が上がるでしょ」みたいなことを言っていたのに、まさに(2021年9月の自民党総裁選で)日本の歴史初の女性総理大臣が誕生しようとした時に、彼女らは一生懸命に高市さんという女性を叩いて、「彼女(高市氏)は家父長制の代表者であり、女性の味方ではない」みたいことを言っていて、もう訳がわからないですね(笑)。


福田:結局女性でも、リベラルじゃなくて保守主義の女性は、総理大臣にまったくふさわしくないってことですね?

NA:そうですね。外国人にしても、女の人にしても、LGBT当事者にしても、左翼に賛同しない人々はマイノリティとして認められないという。

福田:なるほどね。「多様性」はどこにいったのかなっていうことですよね。LGBTの方でも特にゲイの方なんかは、むしろ自民党支持とか、保守の方が多いんですよね。そういうことをツイッターで言うと、「名誉白人」的な、「多数派にすり寄っているLGBTだから、そんな奴らは認めない」みたいな。リベラルは許容範囲が狭いというのを凄く感じました。ナザレンコさんは日本でマイノリティなんだけど、リベラル側から色々言われる?

NA:そうですね。ツイッターで一度、「在留カード」について論争したことがあるんですけど、日本の入国管理局が、在留カードが本物かどうかを確認できるアプリを出したらしくて、それをあるリベラルの方が「外国人差別だ」と言い出したんですね。私は「逆に便利になるんじゃないか」と反論したら、相手が「お前は黙ってろ」と。彼は日本人で、在留カードにはまったく関係がない人なんですね。私はマイノリティとして勝手に代弁されても困るんですが、実際のマイノリティを黙らせて、自分は勝手に代弁しているのはおかしいなと思っていて…

福田:そういう傾向はありますよね。LGBTでも。「新潮45事件」の時、実は私も『新潮45』に書いていたので、巻き込まれたんですが、やっぱりその時も『新潮45』に味方するLGBTの方がいたんですよ。それに対して、普通のノーマルな人たちが「何を言っているんだ」と凄く罵倒してきて、そのLGBTの人もビックリしていましたよね。結局、体制側とか、保守側につくマイノリティを凄く罵倒するんですね。

NA:私が、一番腹が立ったのは、はっきりヘイトを言う人ならまだしも、ある人は凄く上から目線で、「やはり外国人というものは、マジョリティに媚びないと日本で生活できないんだ。それは日本が悪いんだ。ナザレンコも本当はそう思っていないんだけど、日本で生活する以上、そうせざるを得ない」みたいな、勝手に私の内心まで決めようとしていて(苦笑)。そういう人もいるんですね。だから、「マイノリティ自身よりも、私たちリベラルのほうが、マイノリティが考えていることを理解しているんだ」って思っている人が一杯いるんです。

福田:ナザレンコさんも、そもそも外国人で、日本ではマイノリティとして、「本心は違うんだけど、マジョリティ、多数派の日本人におもねる、媚びないと日本では生きていけないからそういうことを言っているんだろう」と思われている?

NA:そう彼らは勝手に思っているんですね。同じ社会に生きている以上は、「人種平等」とか、性的指向を理由に差別してはいけないといったことには凄く賛成なんですけれども、左翼は、逆に‟人の違い”を強調したがる。それによって分断を煽っているんですね。私は、同じ日本社会に生きている以上は、みんな(法的に)平等だし、日本社会に対する帰属意識を持っていれば、属性は何であろうが、仲良くできると思っています。でも彼ら(左翼)は、あえて「あなたたちは日本で差別を受けているんですよ」といった意識を植え付けて、マジョリティとマイノリティの間の対立を煽るし、常に自分がマイノリティであることを覚えておくようにさせているんですね。私は同性愛の人がいても別にどうでもいいんですよ。日常生活をする以上は。でも彼ら(LGBTの活動家)は一々、「同性愛者は特別扱いしなければいけない」「外国人は特別扱いしないといけない」みたいなことを主張して、それによって余計な争いが起こるだけだと思うんですね。やはり一人ひとりを属性ではなく、同じ人間として見るべきなのに、彼らはあえてまったく関係のないところでも属性を持ち出そうとするんですね。

福田:かえってリベラルのほうが本当は差別主義者なんじゃないかなと、私は感じますね。

NA:例えば、アメリカで昔は、白人と黒人は同じトイレを使用してはいけないとか、バスで別の席に座らなければいけないなど、差別的な政策があったじゃないですか。それはいったんなくなりました。でも、今は何が起きているかと言うと、「白人立ち入り禁止区域」ができたり、あるアメリカの大学で「白人が大学に来てはいけない日」を作ったりとか。最初にできたのは「Safe Space」と言って、「人種的マイノリティは、周りに白人がいると差別されるのではないかと不安を抱いているから、白人がいない区域(スペース)を作りましょう」となったんです。ある大学(エバーグリーン州立大学、ワシントン州)では、一年に一日は「白人以外は誰でも来ていいけど、白人は大学に来ないでね」といったイベントも開催されました。民主党が昔から力を持っているような州や、特定のリベラルな大学では、そういう動きも見られるんですね。

福田:白人は「今日は登校してはいけない」と言われて、白人の学生たちはそれに従うんですか?

NA学校教育の一環として、常に罪悪感を覚えるように洗脳(教育)されているので、従う人は従うんです。私がニュースで見たところでは、ほとんどの人が従う中で、一人の教授(Bret Weinstein氏)が「逆差別じゃないか」と抗議したら、もの凄い攻撃を受けて、講義を妨害されたり、大声で非難され、辞任を要求されたり、学校からもキャンパスを離れるように言われたりしたんですね。その後、彼は学校を辞任しています。

福田:それは知りませんでした。私も今回、この本(『ポリコレの正体』)を書いた時に、アメリカの大学が特にリベラルに支配されてひどいんだというのは、色々な方から聞いていたんですけども、さすがに「白人が大学に来てはいけない日」があるというのは知りませんでしたね。それを批判したり、来てはいけないと言われても、行くと何らかの処分を受ける?

NA:一応、その主催者は「参加は任意だ」と言っていますが、実際に抗議した教授はひどい攻撃を受けたわけです。彼ら(左翼リベラル)は「反差別」と言っているんだけど、差別と何も変わらないじゃないかと。だから私がよく言うのは、左翼たちは差別に反対しているのではなくて、差別の対象を自分が気に入らない人に変えたいだけなんですね。

2.「LGBT」容認は世界の主流なのか?

福田:ナザレンコさんの故郷のウクライナでは、今LGBT運動はどうなっているんですか?

NA:ウクライナはやはりキリスト教の影響もあって、昔から保守的な国です。ただ、ソ連時代は無神論の国でありながらも、LGBTには凄く冷たい国だったんですね。今はヨーロッパと接近しようとしているんですが、ヨーロッパは、ジョージ・ソロス(ハンガリー系ユダヤ人の著名な投資家)といった人々が力を持っていて、LGBTプロパガンダを植え付けようとしているんですね。


今、私は腹が立っている国がありまして、ドイツなんです。今ウクライナは大変な状況じゃないですか、ウクライナ国境周辺には10万人位のロシア兵が集まっていて、いつ戦争が始まってもおかしくないのに、彼ら(ドイツ)は、ウクライナに武器を提供しないことを決めたんです。色んな綺麗事を言っているんですけど、結論から言うと、ドイツはウクライナに武器を売らないし、バルト三国がドイツ製の武器をウクライナに渡そうとした時にも、ドイツは拒否権を使って「渡してはいけない」となったんです。それで何をくれたかと言うと、5000個のヘルメットだけです。ウクライナ人の命を守るために、まったくお金を使ってくれないし、協力もしてくれないのに、LGBT教育などには凄く支援をしているんですね。自称・人権団体とかLGBT団体などには。


福田:ウクライナにはLGBTの権利を擁護しようという活動家や団体はある?


NA:あります。ウクライナでは、一般市民のLGBTに対する考え方は凄く保守的なので、例えばLGBT活動家がプライド・パレードなどを行おうとする時に、反対派の市民のほうが何倍も多く集まって阻止しようとしているんですね。今はLGBTパレードがある時には警察のほうが多いんですね。

一つニュースがあって、LGBTの人々が真ん中に数百人位いて、周りはその3倍位の警察官がいて壁を作っていて、その周りは反対市民のほうがずっと多いという光景なんですけど、その時、多くの警察官は任務を断っていた人までいたんですね。「私の信条に反するので、あんな人々を守るのは嫌です。クビになったほうがマシ」みたいな人まで出ていたんですね。

福田:じゃあプライド・パレードをやる人は圧倒的に数が少ない?


NA:圧倒的に少ないですね。私はウクライナに色んな活動家の友達がいるんですけど、毎年、プライド・パレードが行われ、毎年警察との衝突になります。


福田:一般の人たちは保守的な考えですから、LGBT運動に対してはあまりいい印象を持っていない人が多いんですね?


NA:圧倒的に多いし、ウクライナ憲法を読むと、まず「結婚とは男と女のunion(結合)」ということが明記されているし、家族に関する条文もありまして、「親は子供の世話をしなければいけない。子供は働けなくなった親の世話をしなければいけない」みたいなことまで憲法に含まれています。家族を最重視するような条文が実際に入っているんですね。

福田:「家族は社会の中の最小の基礎的単位」という感じですよね。


NA:そうです。よく日本の左翼は、「LGBT容認は世界の主流」などと言っていますが、まったくそうでもなくて、例えばロシアでは、LGBTプロパガンダは法律違反なんですね。未成年者に対して同性愛の映像を見せたり、「同性愛は良い」とか洗脳(教育)することは違反ですし、ポーランドでは、国の3分の1の地域は「LGBTフリーゾーン」と言って、プライド・パレードを違法化しています。ハンガリーでも2、3ヵ月前の話(2021年11月)ですけども、学区におけるLGBTプロパガンダの違法化を国民投票にかける法案が可決されましたし、東ヨーロッパでは反LGBT運動のほうが盛り上がっているんです。世界的に見たら、例えばイスラム教の国では(同性愛行為は)死刑ですよ。なので、左翼は「LGBTを支援するのは国際常識」とか言っていますが、西洋の一部の国の常識ではあるかもしれないけど、世界的に見たら、親LGBTの国のほうが圧倒的に少ないと言いたいですね。

福田:アメリカのバイデン政権は、「人権外交」をやっていると言いますよね。バイデン政権は「LGBT外交」もやり始めているらしくて、アフリカの幾つかの国は、LGBTが法律に触れる国が残っているようですが、それをバイデン政権は撤廃させようとして、「援助が欲しければ、そういうLGBTを差別する法律を撤廃しろ」と。でも、どうも歴史を遡ってみると、アフリカ諸国にそういう法律ができたのは、元々ヨーロッパの植民地だったので、その当時ヨーロッパにあった同性愛を禁ずる「ソドミー法」を導入しただけだったらしいですね。今、欧米はその法律(ソドミー法など)がなくなりましたけど、アフリカは残っているので、それをバイデン政権は「なくせ」と言っているんだけど、何かそれってマッチポンプというか、矛盾を感じるんですけど。「LGBTが世界の常識だ」とか、普遍化と言いますけど、今アメリカのようなかなり過激なLGBT運動が常識かと言うと、世界中を見ると全然違うということですね?

NA:「援助が欲しければLGBTを認めろ」というのは、ウクライナでもそういった圧力を掛けられていて。ウクライナは親露独裁政権から親欧米の民主主義政権に代わったんですが、いまだにヨーロッパからは中途半端な民主主義扱いをされているんですね。だから、まだ人権先進国ではないので、「もっと人権を保護するような法律を一杯通せ」と言われています。その中には同性婚やトランスジェンダーを認めることなども、なぜか一般的な人権と同じ扱いをされていて、そういうことが強制されているんですね。「あなたたちの国には、いまだに同性愛者の差別があるので、それをなくさないと、これ以上は支援できないよ」みたいなことを言っているんです。

バイデン大統領については、彼の20~30年前のインタビューを見ると、凄く反ゲイの主張もしていたんですね。普通に差別用語も使ったりしていたのに、今は票が欲しくて、彼自身はLGBTに関心がないと思うんですけど、民主党のアジェンダ(行動指針)に合わせるようにそういったことをしているんですね。バイデン氏の発言の中で一番嫌な発言があったんですけど、彼は「8歳の男の子が、女の子になりたいと思っているのであれば、それを止めるのはおかしいと思う」といったことを言っていて、いやいや、子供に性転換手術をさせるほうがおかしいだろうと。


カナダでは最近、「コンバージョン・セラピー(転向療法)禁止法」という新しい法律ができました。要するに「子供の性的指向(や性自認)を強制的に変えることは虐待だ」という法律が通ったんですね。

在日カナダ大使館のツイート(2021年12月10日)

NA:凄く立派な法律のように聞こえるけど、内容を見ると、あくまでもゲイの性的指向がある子供を異性愛者に戻そうとすることは違法であって、逆のパターンについて一言も書いていないんですよね。凄く不平等で不公平だし、凄くおかしいと思って。

日本の差別に関する法律もダブルスタンダードが一杯見られるんですね。例えばヘイトスピーチは、在日外国人が日本人に何を言ったってヘイトにならないけど、日本人が外国人を侮辱したら「ヘイトスピーチだ」みたなことがあって、カナダの法律もまったく同じダブルスタンダードが見られるんですね。異性愛者を同性愛者にするのは合法なんだけど、逆は法律違反で虐待って、凄くおかしいんですよ。

福田:LGBTに関して、カナダが一番おかしい、アメリカよりもっと異常な状況になっていると思うんですけど、やっぱりそうなんですね。


NA:アメリカの場合は、「アメリカン・ドリーム」などもあったし、「自由」を一番大切にする考え方もあったんですけど、カナダはどちらかと言うと、最初から福祉国家を目指すなど左寄りの政策を好んでいる傾向があって、それが最近、より悪化したという印象ですね。

(追記:カナダの「コンバージョン・セラピー禁止法」では、性的指向、性自認、性表現を変えるための試みを禁止し、懲役などの刑罰を科すことになっています。これは会話療法も含むため、性的指向、性自認などで悩む人へのカウンセリングを行っただけで罰せられる恐れも出てきます。さらに「コンバージョン・セラピー」を宣伝、広告することでも最大2年間、収監されるリスクがあり、米国などには、同性愛を克服した人たちのコミュニティなどもありますが、そうした取り組みを紹介するだけで罪に問われる可能性があります)


3.欧米の対立構造が日本に持ち込まれている

福田:では、日本のことに話を戻しますね。ナザレンコさんから見て、日本も基本的には保守的な人たちが多い国だと思いますが、今、国内でもLGBT活動家がたくさん活動しています。ただ、そもそも日本と欧米ではLGBTをめぐる状況は全然違っていて、彼ら(性的マイノリティを罰するような法律はなかったし、歴史的に彼らと上手くやっていました。むしろ歴史の中に上手く包摂インクルージョンされた人たちであって、対立構造がなかったはずなのに、活動家たちが対立構造を無理に持ち込もうとしている。日本社会でも「マイノリティ」や「マジョリティ」ということを過剰に考えなければいけないみたいな。同性婚をどうするかなど色々な動きがあるんですが、ナザレンコさんから見ると、今の日本のLGBTをめぐる状況って、どう思われますか?

NA:日本は歴史的にもLGBTなどに寛容な国でしたし、迫害や差別もほとんど起きたことがないんですね。民間レベルでは差別的な人もいたかもしれませんが、国家制度としては差別した事実がまったくないし、今だってLGBTであるために不利益を被ることも一切ないと思うんですよね。

福田:ヘイトクライム(憎悪犯罪)もまずないと思います。


NA:オカマバーだって普通にあちらこちらで…


福田:私も若い時、新宿二丁目のオカマバーにしょっちゅう行ってまして(笑)。


NA:私も川越で行ったことがあるんですけど(笑)。差別がある国だったら、まずそういう店は成り立たないんですね。反対する人から石を投げられることもない。日本ではゲイであるがために暴力を受けるということはまずないですよね。本来は対立構造がなかった訳ですし、今も存在しないのに、彼ら(LGBT活動家や左翼が活動をしているのは、目的が「平等」ではなく「特権」だからだと私は思うんですね。被害者のポジションを一回得たら、自分が何をしたって許されるし、例えば同性婚にしてもそうなんですが、なぜ彼らが同性婚を目指しているのか。今でも恋愛は自由ですし、(同性愛者が)カップルになっても誰も止められないし、同棲だってできるし、(基本的に)何でもできるんですよ。しかし、彼らは結婚という制度にこだわるんですね。それは、結婚してしまえば、国から色んな優遇を受けることになるからですね。例えば、家賃が安い公営住宅に優先的に入れるし、税金の免除があったりして、法律で決まっている優遇政策がある。家族の支援は国の存続に関わるものなので、ごく当たり前のことだと思いますが、それは子供が生まれるだろうという前提で行われる政策です。そんな見込みがないのに、異性愛カップルとまったく同じ優遇を与えるのはどうかと。

福田:家族って、子供が生まれるということで、子供を一番大切に考えるということですよね。だから、国家が色々と優遇策を与えるという。

NA左翼は「権利」の概念をはき違えていると思うんですね。本来「権利」というのは、「何かをする権利」であるのに、彼ら(左翼)は、「誰かに何かをしてもらう権利」だと勘違いしています。例えば、「国家から生活保護を受けるのは当たり前」と言ったり、「異性愛家族と同等の優遇を受けるのは当たり前」といったことを主張しているんですけど、子供の支援は、ただお金を渡すのではなくて、未来への投資でもあるんです。異性愛者の家族の中で生まれた子供は(将来)労働者になって、自分の労働によって富を築いて、税金という形で今まで掛かったお金を倍以上に返すことになるんですね。国家が優しいから金をばらまいているのではなくて、ちゃんと将来のことを考えて未来に投資しているんですよ。

福田:要するに、子供が成長して立派な納税者になる。すると、国家にとってそれはとても良いことである訳ですよね。そういうことをちゃんと考えた、未来への投資。最近、同性愛者がアメリカなどで養子をもらったり、生殖医療で子供を作ったりしていますが、それが子供にとって、お父さんが二人とかお母さんが二人とかになって、かなり複雑なことになって、子供にとってどうなのかなと思うんですが… LGBTの人たちも子供を持とうとしている。


NA:それもやはり、子供の精神や福祉を最優先に考えるべきでして、二人のお父さんの間で生まれた子供が、普通の… 「普通」と言ったらまた叩かれるんですが(苦笑)。


福田:言い方に気を付けなくちゃいけないという「LGBTタブー」というのが日本にもありますね。話し方、言葉の選び方に気をつけなくちゃいけない…


NA:それもおかしいとは思いますけどね。表現の自由が保障されているはずなのに、相当、言葉に気を付けないと、すぐ彼らは反対デモを起こして徹底的に叩くんですよ。


福田:特に「差別」に凄い敏感で、「差別」という言葉を武器に使っていますよね。


NA:同性愛者の子育てについて話を戻しますね。ロシアで、ある社会活動家が未成年を装って、ネットでペドフィリア(幼児性愛者)の人たちを捕まえてインタビューするという番組がありました。彼が最初に聞いていたのは、「お母さんもお父さんもいたの?」と。そこで半分以上の人が、「お母さんだけの家庭で育った」と答えたんです。模範となるお父さんがいなかったから、男とは何か、ロールモデル(模範となる人物)が分からなかったために、性に対する考え方がぶれてしまって、同性愛者になってしまったみたいな人もある程度いたし、実際にLGBTの中で、お父さんと関係が悪かったとか、お父さんが元々いなかったとか、そういう人が非常に多いんですね。人間という、生物学的な観点から見たら、やはりお父さんとお母さんの間で育つのがごく自然なことであって、それがずれると色んな精神的な問題が起きるはずなんです。なので、簡単に同性愛者らに養子を認めるのも子供には良くないと思いますね。

福田:アメリカでも、レズビアンのカップルに養子として入った子供(ロバート・オスカー・ロペス)が大きくなって、男の子だったんですけど、ゲイになっちゃった。アメリカで同性婚が認められる裁判があった時に、彼は「普通じゃない家庭、レズビアンのカップル、お母さんが二人いる家庭に育ったので、自分はゲイになった」という証言をしました。そして、「同性婚は、自分のような子供が生まれるから良くないんじゃないか」と、うっかりそういうことを言ったら、その方は大学教授だったのですが、大学で村八分、仲間外れになってしまったと。そういう事例もありますけどね。

NA:だから私がLGBT運動の中で一番気に入らないのは、パレードでもなく、学校でそういったプロパガンダを教えようとすることなんですね。子供というのは白紙であり、揺るぎない信条がある訳でもなくて、周りの社会や人を見て、それを真似しようとしたり、周りの考え方を受け入れたりして、自分の考え方が出来上がる訳なんです。子供の頃から、そういった…

福田:(子供が)白紙の状態の時に、LGBT教育を受けると、いわゆる「刷り込み」と言うのかな…

NA:そうですね。それ(刷り込み)が起きる。なぜそう思ったかと言うと、アメリカの大学(アリゾナクリスチャン大学など)が若者の間で世論調査を行って、「あなたは自分自身がLGBTQ(LGBTとQ:性的指向、性自認がわからない)だと思いますか?」との質問に、18歳から24歳までの39%が「自分はLGBTQだ」と答えたんですね。それが真実のはずがないんですよ。もし人類の中で40%がLGBTだったら、人類が滅びているはずなんですね。でも、本人たちはそう答えているんです。それはなぜかと言うと、やはり本人たちがLGBTだからではなくて、学校や家庭でもよく、「自分の心の声をよく聞きなさい」「(あなたは)LGBTの傾向があるんじゃないか」などと、半強制的に自分がLGBTだという認識が植え付けられるんですね。子供の頃から社会のことも何も分からない状態の中で、学校でも家庭でも、そういった教育をされてしまったら、やはりそう(自分はLGBT)じゃないかと思ってしまうんですね。人の精神を壊しているんですよ、そういった教育が

福田:だから確かに、アメリカなどでもアンケートや調査をすると、どんどんLGBTの数が増えていますよね

NAもしLGBTが生まれつきということが真実であれば、そういった変動はなかったはずです。

福田:そうですよね。よく左翼の人たちが、LGBTに関して「基本的に変えられない属性」という言い方をしますね。そもそも、「生まれつきそういう風になっているから、変えられない属性、そういう人たちに対しての差別はいけない」。だけど、よく聞いてみると、若い時にはノーマルだったんだけど、その後、ゲイになっちゃったということを結構聞くんです。「変えられない属性」じゃないんじゃないか。トランスジェンダーなんか凄く不安定ですよね。それらを踏まえて科学的にLGBTについて解明しようとする学者もいると思うんですが、そういう学者にも迫害がありますよね。

NA:「(性的指向は)生まれつきだよ、変えられないんだよ」と言っているけど、それを変える方法を探している科学者だっていたはずだし、今もいるんですけど、そういう研究をしようとすると、凄い政治的な圧力が掛けられて、研究ができなくなっているんですね。だから、彼ら(LGBT活動家ら)は「変えられないよ」と言っているけど、「いや、変えられる方法があるんじゃないか」と言うだけで叩かれて、マッチポンプなんですね。彼らが研究させないから、真実が分からないんです。

福田きちんとした研究をしようとする人たちに色々な所から圧力が掛かって、実際、研究発表もなかなかできなくなっている、それはおかしいだろうということがありましたけど、やっぱりここまでLGBTを強制する、アメリカではLGBTを礼賛かな? 子供がゲイとかレズビアンだったら、親が喜ばなければいけないみたいな状況になっている。それはさすがにおかしいだろうと思うんですけど、なんでここまでなってしまったのかなと。ここまで行き過ぎた状況になってしまったのか、凄く不思議なんですけどね。

NA:アメリカではよくヤバいニュースを目にします。例えば、ジェームス・ヤンガーという8歳の男の子の話が有名だと思います。幼い頃にお母さんの真似をしたり、女の子のおもちゃで遊んでいたからと言って、お母さんが勝手に「彼はトランスジェンダーだ」と決めつけて、ホルモン・ブロッカー(ホルモン抑制剤)まで注射させようとして、お父さんと裁判になったんです。

そのほか、13歳の女の子は、自分が男だと言って、親の協力を得て乳房を切除してもらったとか、自分の1歳の子供(男の子)をトランスジェンダーだと決めつけて、女の子として育てるとか。赤ちゃんが生まれたのに、名前を付けない親もいる。なぜかと言うと、「本人は自分がどんなジェンダーかまだ自覚していないから」と。

福田:そういう風な意識を持っている人たちが、アメリカではかなり増えているってこと?


NA:そうなんですね。リベラルな親のエゴのために、子供が犠牲になっているという印象しか受けないんですね。

福田:それって、虐待ですよね?


NA:そうです。でも、リベラルな人々からは「なんと進歩的だろう」と賛美されているんですね。

福田:日本も、そういう欧米の価値観が入ってきてしまったら、ハッキリ言って、大変良くないと思っています。こうしたハッキリ言って行き過ぎた価値観が、日本に入ってくると、私たち保守派としては困る。保守派というかな、やっぱり保守派とかリベラルとか関係なく、常識人として。ナザレンコさんから見て、こういうものが入ってこないようにするには、日本人としてどうしたらいいんですかね?

NA:現時点で、まだ日本は欧米ほどひどくないと思いますが、千葉市のLGBTに関する指針(「LGBTを知りサポートするためのガイドライン」)を見ると、アメリカ民主党の法律のパクリ、そのものなんですね。「父」と「母」(という言葉)を使うな、とか。フランスだって、10年位前からそうなっているじゃないですか。「親1」、「親2」という。千葉市も「母」「父」(という言葉)を使わずに、「『保護者』と言いましょう」とか、「性別を決めつける言動を避けましょう」という指針を出しているんです。

福田:それは、市役所の職員が窓口で、市民が来た時に、「夫」や「妻」など性別をハッキリ表す言葉を使うなみたいな。


NA:やはり日本は圧倒的に一般的な常識を持っている人が多いから、危機感を覚えない人が多いんですが、そんな一般人の関心の向かないところで、少しずつそういった法律が可決されたりしているんですね。だから、気づいたらもう遅いかもしれないんです。なので、それを防止するのに、私も自分自身が反LGBTだとは思っていないし、伝統的な家族を守りたいという認識しかなくて、LGBTの批判よりも、伝統的な家族の重要性を訴えることが大切だと思っています。

また、訴えるだけではなくて、伝統的な家族をより擁護し保護するような法案や、憲法改正が必要だと思います。もし多くの人が家族の重要性に気づいたら、自然とLGBTプロパガンダに洗脳されなくなるのではないかと考えています。母に対する愛とか、子供に対する愛は、遺伝子の中に含まれているごく自然な感情なので、(共産主義的な)プロパガンダによって、そういった常識が忘れられつつあるんですが、やはり人間の本性はそうなんだから、少しでもそれを思い出させたら、みんな目覚めるはずだと思うんですね。家族の重要性に気づかせるような発信と法整備が一番大事かなと思います。


福田:日本でも結婚するカップルの内で離婚が多く、シングルマザーも凄く増えていますし、以前の伝統的な家族がどんどん崩れてきている。その中にLGBTの概念、イデオロギーが入ってきてしまう。そういうところで伝統的な家族を守らないといけない。そうするとリベラルが、「それは凄く古臭い意識だ」とか何とかと言ってくる訳ですよね。向こう(左翼リベラル)が攻めてきて、保守が守るということで色々とやっていますが、ただ、発信力・活動においてリベラルって、凄く積極的ですよね。

NA:彼らは少数派でありながらも、凄くうるさいんだよね。

福田:大きな声を出すから、それだけ影響力もある。

NA:先日、「虎ノ門ニュース」にも出演させて頂きました。そこでも話したのですが、フェミスト団体が「Don’t be silence(沈黙しないで)」というカードを掲げていたんですね。でも、それを見て思ったのが、「お前たちこそ静かにしたことないじゃないか」と、「日本の中で一番うるさいんじゃないか」と思って(苦笑)、「たまには人の話を黙って聞いてみろよ」と(苦笑)。あれだけ活動しているのに、自分たちは静かだと思っているらしいんですね。だから難しいのは、彼(彼女)らは被差別意識があるし、言っていることに面白みがあるんですね。私たち保守は、一般的なことしか言っていないから、当たり前なことを言っても話題にならないんです。彼らはおかしなことを言うから、賛同しない人でも何か面白いと思って耳を傾けてくれるんですね。

福田:「LGBT」という言葉が日本に入って来た時も、「えっ? それ何?」って、ある程度注目を集めましたよね。それまで「ゲイ」とか「レズ」と言ってもあまり関心を集めなかった。「LGBT」という凄くキャッチーな、「それ何?」ということで、あっという間に日本国内でも「彼らへの差別はやめましょう」と、キャンペーンになっちゃったんですね。確かに、私たち(保守派)が言っていることは面白みがない。伝統的なことしか言わない。だけど彼らは、常に欧米にアンテナを張り巡らせているので、向こう(欧米など)から新しい概念が入ると、それを日本国内でワッーと広めようとする。そこの点で確かに注目を集める。

4.トランスジェンダーをめぐる問題が深刻に

福田:米国でも特にトランスジェンダーについては、トイレの問題だとか、オリンピックでも生物学的には男性なのに、女性だと主張して、テストステロン値を少し下げれば出場できるなど、常識から考えてかなり離れたところにいっちゃっている。でも私は、さすがに「トランスジェンダリズム」に関しては、バックラッシュ(反動)が起きるんじゃないかと思うんですが。さすがに今の状況は変ですよね。ナザレンコさんはどう思います?

NA:そもそも、現実よりも本人の主張や思い込みを優先するのはおかしいと思います。だったら、私は「心が日本人」と言ったら参政権をもらえるのかと言うと、そうではないですよね。なのに、なぜか「心が女」だと言ったら、女性と同じ権利をもらえるんですね。

女子トイレ利用に関しては、LGBTの中で「ジェンダー・フルイド(Gender Fluid)」、「流動的な性」という考え方があって、要するにジェンダーが決まっているのではなくて、その時その時に違うジェンダーになったりするみたいな考えがあって、「今日は男、明日は女」みたいなものがあるんですね。そうなると、女子(トイレや風呂)のほうに入りたい時だけは心が女になったり(苦笑)、そんな人も出てきかねない。だから本当はフェミニストこそ、それに対して反論しなければいけないんですね。


実際にオリンピックとかスポーツを見ると、男性として生まれた人(トランス女性)が第1位、第2位を取ったりしている。本来は、男子と女子を分ける意味があったんですね。ホルモンとか体つきとか、物理的、生物学的な違いがあるから分けられたのに、生物学的な男性を女性と競争させることは、イコール女性の活躍の機会を奪うことに他なりません

例えば、J・K・ローリングという『ハリーポッター』の作者ですね、あの人も元々左寄りだったんですが、LGBT問題でかなり叩かれている。ある雑誌で女性に関して「生理のある方」という言い方をしているのを見て、彼女は「別の言い方があった気がする。『女』とか」と書いたら、めちゃ叩かれたんです。今年は『ハリーポッター』の20周年みたいなイベントがあったけど、「J・K・ローリングは差別主義者だから呼ばない」みたいなことにまでなっています。「トランスジェンダリズム」が度を超えてしまって、今は雑誌を見ると、「生理のある方」もそうなんですが、「膣所有者」とか…(福田:あまりにも露骨な表現になっちゃって)。どう考えてもおかしいだろうと思って。トランスジェンダーというのは社会の中で1%もいない位の極めて少数派なんですね。0.5%あるかどうかも疑わしいのに、その人々のゆえに社会全体のあり方を変えるのは非合理的だし、おかしいと思いますね。特に女性は、世界人口の5割位は女性じゃないですか。そんな0.5%のために5割(の女性)を危険に晒すのはおかしいと思いますし。


最近、イギリスで「女性によるレイプが急増している」というニュースを見たんです。「女性が加害者のレイプ事件が急増している」ということで、「絶対おかしいやろ!」と思ってよく調べたら、逮捕された時に「女」を名乗れば、女性による犯罪として統計上は数えられてしまうので…。自分がトランスジェンダーだと言えば、女性の刑務所に入るし…

福田「カレン・ホワイト事件」ってありましたよね。当時53歳の男、写真を見ると完全におじさん。彼が隣人を刺して逮捕されたら、突如、お化粧して、女性のかつらをかぶるようになって、「私はカレン・ホワイト」と言い出して、「じゃあ…」ということで女性刑務所に入れたら、(刑務所の)中で女性の収監者二人をレイプしちゃったんですね。なんで簡単に女性刑務所に入れてしまったのかなと思ったら、確かに理由があって、以前、トランスジェンダー女性を男子刑務所に入れたら自殺した。だからカレン・ホワイトがそう言った時も、簡単に女性刑務所に入れてしまったということがあるみたいですね。

NA:レイプされた女性のほうが、自殺する可能性がずっと高いと思いますし…


福田:そういう意味では、女性はトランスジェンダー女性に対して、怖さを覚えるということがある訳ですよね。


NA:特に一番ずるいのは、「私は、心は女体は男だけど、レズビアンです」みたいな人もいるんで…

福田:それ、日本の新聞でもよく出てきまして、最初よく意味が分からなくて、トランスジェンダー女性なんだけど、一緒に暮らしているのは女性? それはつまり、トランスジェンダー女性でレズビアンってこと。それって本当にトランスジェンダー女性なの?

NA:ただ、女装の趣味があるようにしか思えない、という意見があってもおかしくない。性的指向なのか、性癖なのか、その重要な線引きすら論じられないままになっている。

福田:凄くややこしい事件が日本でも起きていて、(新宿)二丁目にあるレズビアン・バーで、青山学院大学教授をしている「トランスジェンダー女性」が、「私は女性だから」と入ろうとしたら、180㎝以上あるような長身だし、パッと見、男だなという感じで、お店が断ったんです。そこで凄いトラブルが起きて、結局そのレズビアン・バーが謝らなければならなくなった。でも、その青山学院大学のトランスジェンダー女性は、日本女性を妻にしている。だからまさに、「トランスジェンダー女性でレズビアン」(?) どうもよく分からないなという感じですけどね。

NA:都合が良過ぎるでしょ。一番恐ろしいのは、そういったことを法律に盛り込もうとしていることですね。昨年の自民党(LGBT理解増進)法案で、「性自認」という言葉を法律の中に書こうとしていました。自民党の中でも元防衛大臣の稲田朋美さんですね。あの人は保守を名乗りながら、LGBTとか夫婦別姓などに関しては立憲民主党と変わらない立場を取っています。私は「性自認」という言葉を絶対に法律に盛り込んではいけないと思っていて、なぜかと言うと、性同一性障害は病気で、ちゃんと医師が診断して、書類(診断書)を出すんですが、「性自認」は自分だけで勝手に決められることで、それを法律に入れてしまうと、まさに欧米と同じような犯罪が起きるのではないかと思います。「心は女だから、女性刑務所に入れろ」だとか、「(心は)女だから、女性の風呂場に入れろ」だとか。言い方を変えれば、妄想や思い込みだって「自認」の中に入ってしまうんです。

福田:他人から見たら、分かんないですよね。何か良くない目的をもって「自分は女性だ」と言っているかもしれない。自由に女子トイレに入って、レイプとかそういうことをしたくて、そう言っている可能性もなきにしもあらず。

NA本当のトランスジェンダーはそういうつもりがなかったとしても、普通の男性の犯罪者は、そういった法律を利用して、より犯罪を行いやすくするために利用することも十分あり得るんですね。だから、女性にとって危険な世の中を作るのは、凄くおかしいんですよね。

福田:だからフェミニストとトランスジェンダー女性の間で(ツイッター上などで)、もの凄い対立が起きていますよね。


NA:性自認が女だったら、女性が入る温泉で裸のままで歩いてもいいみたいな風潮があるじゃないですか。私がツイッターで反論する時に、「私は、心は猫なんですけど、裸のままで道を歩いてもいいかな」と言ったら、「お前はトランスジェンダーをバカにしている」と言われて、私は「それはトランスネコの差別だ」と答えたんだけれども(苦笑)。「心が何か」って誰もが言えるんですよ。本当かどうかは確かめようがないから。だからこそ人間は、客観的なことをもとに法律を作らなければいけないんです。そういう「人の気持ち」を法律に盛り込んでしまうと、きりがないんですよ。

福田:でも実際に、性自認だけで「自分が女だ」となったら、「あ、そうですね」と法律的に認めている国が西ヨーロッパの国でも結構ありますよね。アメリカの幾つかの州でも認められるんでしったっけ?

NA:そうですね。性自認を認める州もあれば、認めない州もあるんですけど。


福田:でもアメリカでもそこで、トラブルや騒ぎが起きていますよね。ドライブインの女子トイレに入ったら、完全に男みたいな人が入っていて、警察に通報したら、その人は「自分はトランスジェンダーだ」ということで、通報した人が逮捕されるような感じになってしまっている。


NA:BLM(ブラック・ライブズ・マター)の暴動の時に一度、左翼の‟武器”が左翼に対して使われたことがあったんです。暴動に参加した女性が、警察官に逮捕されていて、逮捕していたのはみんな男性だったんですね。そうしたら左翼の仲間が、「これは性的虐待だぞ。女の警察官を呼べよ!」と。そうしたら、警察官が「心は女です」と答えて(笑)。相手は何も反論できなかったっていう(笑)。ちなみに、最近のハンガリーは、まったく逆の法律を可決しました。ハンガリーでは生まれた時の性を変えてはいけないという法律が可決されたんですね(2020年5月)。

福田:ハンガリーは、政治的にはかなり保守的ですよね。


NA:そうなんです。移民に対しても厳しいし、LGBTにも…


福田:確かいつも、EUなどから怒られているところがありますよね。


NA:ポーランドもそうですけど、東ヨーロッパと西ヨーロッパでは、LGBT問題に対する考え方は正反対ですね。ポーランドも(西ヨーロッパ側から)無茶苦茶怒られるし、ウクライナも無茶苦茶怒られるんですけど。ポーランドがLGBTパレードを行ってはいけない地域を定めた時に、ドイツは「経済制裁を課すぞ」とまで脅かしていたんですね。ハンガリーもそうなんですけど、「そういう法律を作るなら、支援を止めるぞ」といった脅し方をしているんです。彼らは何のために戦っているんだろうと思っていて…

福田:LGBTの権利が、ここまであまりにも過剰に。「権利」というよりも「優遇」


NA:そうですね、「特権」だと思います。

福田:なんでここまでいってしまったのかと言ったら、私たちの理解では、そもそも欧米では、LGBT、同性愛者に対しての迫害が凄く大きくて、ヘイトクライムもあった。だから、国としても反省をして、反省し過ぎて、極端から極端に、あっという間に同性婚も認められたじゃないですか。そもそも保守的な日本からすると、振り子の振れ幅が大きくてビックリしちゃうんですよね。

NA:アメリカにおいては人種問題もまったく同じですね。黒人差別の歴史を経て、やっと法律的な差別をなくしたと思ったら、また行き過ぎちゃって、今度は(黒人の)優遇と白人差別にいってしまったんですね。LGBTも同じですね。やはり今まではウクライナだって、1992年までは同性愛は刑法違反だった訳なんですけど、それが独立した途端にそういう法律をなくして、同性愛が認められたんですね。その時点でLGBTの権利は保護されている訳なんですよ。同性愛をしても、国家から何の迫害も受けない訳ですから。すると今度は、「認めるだけでは足りないから、支援しろ」みたいなことを言って。「差別」の反対語は、「優遇」ではなく「平等」だと私は考えています。でも、なぜか今の左翼は、「差別受けた人を優遇しないといけない」という考え方になっていて、そうしたら一生終わらないんですよ。悪循環なんですよ。例えば人種問題において、ある民族を優遇して、その後は他の民族は差別されているように感じて、今度は逆にこの民族は上げられて… ずっと対立は続くんですよ。みんな「同権」にしなければ、それはいつまでも終わらないと思います。

福田:このおかしな状況は、いつまで続くのかな。これが普遍化、常識化されちゃったら凄く困るなと思うんですけど。


NA:それは近年の話ではなくて、例えば、古代ローマ帝国とか、古代ギリシャだって、当時LGBT(同性愛の)問題があったんじゃないですか。大体あらゆる国は、発展する時にそういった問題はあまり起きないなんですけど、発展し過ぎて豊かになってしまうと、一気にモラルの腐敗が起きたり、同性愛が普及したりして、結局は国が滅び始めている証でもあるんではないかと思って…

私がよく例として出すのが、「Universe 25(ユニバース25)」という実験があったんですけど。20世紀の半ば(注:1968~70年頃)に行われた実験で、「ネズミの楽園」を作ろうとした研究者がいました。ネズミにとって食糧は幾らでもある、温度は最適である、水はいくらでもある、天敵はいない。まさに楽園みたいな状態が作られて、最初ネズミたちは繁殖して凄く増えていたんです。しかし、ある程度を過ぎると、メスが自分の子供の世話をしなくなったり、同性愛行為がよく見られたりして、オスのメス化とメスのオス化が見られて、ジェンダー・ロール性的役割が完全に崩壊してしまって、最終的には滅びたんですね。結局は全員が死んでしまったという(同様の実験が25回行われたが、結果はすべて同じだったという)。


福田:結局、子供が生まれない状況になってしまったんですか?


NA:オスがメスに興味を失って、ずっと自分の肌をキレイにしたり、まったく性行為に興味をなくしてしまったんですね。メスもオスに興味を失い、オスらしく振る舞うようになって、メス同士で戦ったりとか、食料を独占したりとか、まさにフェミニズムそのものなんですけど。まさに今、人間社会で起きているような現象だと思いまして。

歴史を遡ると、古代ギリシャでも古代ローマでも、帝国が崩壊寸前の時に、そういった現象がたくさん起きて、それによって国がさらに弱体化して滅びてしまって、そういったことが起きない異民族が侵略して、支配するというのが歴史にあるんですね。ローマ帝国は、バーバリアン、野蛮族によって支配されたんですけど、ローマ帝国では同性愛が一般化されていたんですが、野蛮族では、凄く男らしさが大事にされていたんですね。やはりどちらが強い戦士かと言えば、子供の頃から男らしく育った国の兵士のほうがもちろん戦闘に向いていた訳ですし、より強く戦うんですね。中国でさえ、今は女らしい男をあまりテレビに出さないようにとか、中国でも反LGBT政策が最近は採られるようになっているんですね。


福田:アメリカで兵士を募集する時のキャンペーン動画があって、それはまるでディズニーの映画みたいで、それは何かって言うと、主人公が女性兵士で、その女性兵士はレズビアンの両親に育てられていた。それを見たアメリカ人がさすがに凄く怒ってしまって、それに比べて、ロシアの兵士募集はマッチョな(男性がメイン)。これでは、ビデオだけでも負けちゃうじゃないかと。あの動画は凄い不評だったんですよね。さすがに常識を持っている国民が多いんだなと思いましたけど。でも、アメリカの軍隊も今は、同性愛者が(軍隊に)入っている訳ですよね?


NA:トランスジェンダーは、確かにバイデン政権になって解禁されたという話は聞きましたね。本来は同性愛者も軍隊に入ることができなくて、それは1990年代頃から同性愛者はOKになって、まだトランスジェンダーはダメで、その後、バイデンの時は誰でもOKになったように認識しているのですが。一応ロシアでは、徴兵があるんですけど、同性愛者であることは徴兵免除の理由の一つでありますね。彼氏と一緒に同棲しているかなど確認されますね。日本で結婚ビザがあるじゃないですか、あれも結婚しただけでは済まなくて、結婚の実態があるかないかも入国管理局によって確認されるんですけど、住民票はどこに置かれているかなど。ロシアでも同性愛者であることを証明しなければいけないんですね。

福田:こういう現象が、日本に過激なLGBT「共生」ではなく、「強制」になると困るので、何とかしたいなと思っているんですけど…


NA:私は異性愛者なんですけど、一々異性愛者のパレードに参加していないし、例えば、同性愛者の人がいても、わざわざ「女が大好きなんだけど」とか言わないじゃないですか(笑)。そんな性的な話は、聞きたい人の前ですればいいんだけど、社会にアピールするものではないと思うんですね。まず、同性愛、異性愛以前に、普通に倫理に反するような行為だと思うんですね。本来、LGBTは自由恋愛がメインだったし、「二人の大人がお互いの合意の上で何をやったっていいでしょ。あなたには関係ないでしょ」と言っていたはずなのに、今は、私は(そんな話題を)避けたいのに、彼らはパレードを行なったり、LGBTの旗(レインボーフラッグ)をあらゆる所に飾ったり、会社でLGBTのバッグを作ったり、映画でLGBTの枠を作ったりして、避けることもできないし、もう完全に個人的な問題(領域)を超えたんですね。

福田:私なんか、いわゆる「LGBT」という言葉が日本に入った時に、「差別はいけない」という言葉とセットになっていた訳ですね。「えっ?」と思ったんですよ。性的指向などは本来、個人的なことじゃないですか。「それが差別問題になるのか?」と。特に日本では歴史的に見てハッキリ差別されたことがないので、極めて個人的な性に関することで、差別者と被差別者という風になってしまうのか、最初は凄く違和感だったんですね。確かに欧米で彼らは迫害されていたから、そういうことは成り立つかもしれないけど、日本ではちょっと違うだろうなと思っていたのが、たちまち(LGBTの)活動家が出てきて、大々的に活動されていて。まるで多数派に罪があるみたいな、それはおかしいだろうと思いますね。


以上、この後も、対談はBLMの問題やウクライナ危機など、様々な話題に及びました。


二人の主張をさらに詳しく知りたい方は、福田ますみ氏の著書『ポリコレの正体』や、ナザレンコ・アンドリー氏のツイッター(@nippon_ukuraina)をぜひご確認ください。