同性愛は自らの意思に基づいて選択・変更できないことは確立した知見ではない
大和 正 Ph.D(教育学専攻)
去る3月17日、札幌地方裁判所(竹部知子裁判長)は、同性同士の法律婚を認めないのは「婚姻の自由」などを保障した憲法に反するとして、北海道内の同性カップル3組6人が慰謝料各100万円の支払いを国に求めた訴訟で、違憲性を認めつつ、請求を棄却したが、その判決文の中で、「同性愛は自らの意思に基づいて選択・変更できないことは確立した知見である」とした。
つまり、同性愛は自らの意思に基づいて選択・変更できないので、同性婚を容認しなければならないということである。
そして国民の多くは、同性愛は生まれつきであり、自らの意思に基づいて選択・変更できないので同性婚を容認すべきであると思っている。
しかし実は、同性愛は先天的なものでなく、後天的なものであるということを裏付ける研究結果がアメリカにおいて多数ある。
そして、その最近の研究結果が国際学術誌『Science』(2019年8月30日発行)に掲載された。米国と英国の研究者が同性愛の経験がある47万人の遺伝形質を調査した結果、同性愛に関連する特定の遺伝子を見つけることができなかった。
米国マサチューセッツ総合病院とハーバード大学、イギリスのケンブリッジ大などの国際共同研究チームは、英国と米国で同性間の性的関係をもったことがあると答えた男性と女性の47万7522人の遺伝形質を調べた結果、同性愛に関連する特異遺伝子は発見されなかったと明らかにした。
ただし同性愛と関連があると思われる5つの塩基のバリエーションが発見されたが、やはり同性愛に影響を与える確率は1%未満であることが分かった。
研究者たちは、英国のバイオバンクと米の23&meで保管されている遺伝形質の中で同性間の性交渉の経験があると言った人のデータを選別して分析した。英国バイオバンクで40万8995人、23&meでは6万8527人の遺伝形質を調査した。
その結果、研究者たちは、同性愛に関連する単一の遺伝子は存在せず、その代わりに、数千個の遺伝子変異が関連していることが分かったと説明した。ただし、この遺伝子変異はまた、同性愛への影響は微々たるものである。
ヒト細胞の核の中の染色体には、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、グアニン(G)などの4つの塩基が延々と表示されるDNAが存在する。このDNAの特定の塩基配列がRNAで転写された後、生命維持に必要なタンパク質を作り出す。この時、このDNA塩基配列を遺伝子と呼ぶ。認知症を引き起こす遺伝子、乳癌を誘発する遺伝子の両方の特定の塩基が長く表示された状態を意味する。
このような遺伝子は、修正を介して、次世代に伝達されることもある。しかし、47万人の同性愛の経験がある遺伝形質を分析結果、このような遺伝子は発見されなかった。代わりに、複数DNA塩基のうち、いくつかの変異体で塩基が変わった「単一の塩基のバリエーション(SNP)」が発見された。
研究者は、「5つの遺伝子変異が同性愛の行動に意味のある役割をすると思われるが、この他にも数千個の遺伝的バリエーションが関連付けられていることが確認された」とし、「このような変異は、ほんの少しの効果を持っているだけで、このような変化で同性愛の可能性があると話をすることはできない」と強調した。
世界には、生まれてから大人になるまで異性愛者であったが、同性愛の経験によって同性愛者や両性愛者になった人たち、回復治療や宗教的な体験、あるいは、自然に、同性愛から離れた元同性愛たちがいる。
したがって、自らの意思に基づいて選択・変更できないことは確立した知見であるというのは正しくない。
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