同性パートナーシップという差別政策(橋本琴絵)


橋本琴絵

令和2年11月11日付け朝日新聞東京版朝刊にて、埼玉県春日部市の井上英治議員が、同性愛者らによる、いわゆる同性パートナーシップ認証の要求について、「過去2年間の市の人権相談窓口(いじめ相談)に対して被害申告が一度もなかった事実をもって同性愛者差別は市内には実際に存在しない」との旨を発言したことに対し、苛烈な非難を加えた。


同性パートナーシップとは、民法および戸籍法の諸規定に同性結婚が認められていないことを受けて、東京都渋谷区などが平成27年に自治体として初めて「同性パートナーシップ制度」を創設し、同性愛カップルに対して区営住宅の利用権を付与するなどした政策だ。


しかし、これらの政策は実は極めて深刻な差別思想に立脚している事実は知られていない。

というのも、我が国の婚姻制度において憲法上の結婚条件とされている「両性の合意」があっても婚姻が法律上禁止されているカップルが数多くいる中、同性愛者にのみ特権的地位を付与することで「法の下の平等」を全否定する差別思想の実現が「同性パートナーシップ」だからである。


例えば、養子縁組を締結した相手方とは離縁後も一生涯婚姻は禁止され、また結婚した相手方の父母とは離婚後も結婚が禁止されている。何より度々問題となっているのが「近親結婚」の禁止である。


例えば、成人の意思能力者である叔父と姪の戸籍関係にあったカップルが深く愛し合うも婚姻を禁止され、かつ、長年内縁関係として生活を続けた後、内縁の夫である叔父の死亡後に姪である内縁の妻が厚生遺族年金受給を請求したところ、同受給権を否定されたことから裁判所に提訴した。これについて、東京高裁は次のように判断しているので引用したい。

公的保護の対象にふさわしい内縁関係にある者であるかどうかという観点からの判断が求められ、(中略)社会倫理的な配慮という公益的要請を無視することはできない」(東京高裁 平成17年5月31日判決 遺族厚生年金不支給処分取消請求控訴事件)


これは、当然同性愛カップルに対しても当てはまる言葉である。

本論が問題視する同性パートナーシップとは、地方自治体の裁量においてなされる。そして、言うまでもなく地方自治体は憲法の制約を受ける。つまり、憲法第14条が定める「法の下の平等」の遵守において、なぜ近親パートナーシップなどが依然として禁止されている現状に対して、同性パートナーシップに対してのみ特権的に認めるのか、その合理的説明を一切することなく、渋谷区などは差別政策を執行しているのである。


もちろん、同性愛をはじめとする近親相姦愛、児童結婚など、法律が禁忌としてきたあらゆる関係性において、「当事者の愛を否定することは出来ない」としてパートナーシップ認証をするならば一応の筋は通っているが、こうした政策が有権者に支持される理由はない。


結局のところ、前述の通り「他に多くの婚姻および内縁関係が否定されているカップルがいる中、声の大きい同性愛者に対してのみ特権的地位を認める差別政策」を実行しているに過ぎず、春日部市の井上氏はこうした「差別思想をなくすため」に声を挙げたところ、多くの差別主義者からいわれなき攻撃を受け、謝罪強要の被害を受けたのである。


加えて、井上市議が主張した「同性愛差別は存在しない」とする認識も、国際的に適切である。例えば、1980年代、日本の民放では同性愛者が出演して歌などを披露していた頃、ドイツやイギリスでは、ただ同性愛者というだけで刑務所に入らなければならなかった。そして、今現在も同性愛者というだけで絞首刑に処せられる国々が「国連人権理事国」を務めている(アラブ首長国連邦など)。これらの国々は、「ソドミー法」を定めて同性愛者を処刑することは「基本的人権を尊重する上で欠かせない」とまで主張している。


しかし、我が国の歴史にそのような差別政策は存在しない。よく勘違いされるが、差別とは、国家権力が行うことではじめて成立するものであり、個人の思想ないし倫理観において同性愛者を嫌悪することは思想信条の自由であり、その思想信条を否定すること自体が「差別」なのである。その意味で我が国では、過去も現在も同性愛者を差別した事実は存在しない。


以上までの背景に鑑み、地方自治体において「差別主義」を条例化することの愚に警鐘を鳴らした井上市議は、基本的人権の擁護と法の下の平等を遵守する観点からも適切であり、あらぬ差別政策を阻止する重要な役割を果たされたと客観的に言える。


差別主義者とは、多くの場合において自らが差別をしている自覚なく差別をする。そうした差別主義者の弾圧に屈することなく、自由と平等を守るべきであると声を挙げた同市議の勇気を称えたい



橋本 琴絵(はしもと ことえ)

昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。平成29年(2017)、衆院選に立候補(広島5区/比例中国ブロック)。日本会議会員。

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