日本全国のLGBTの割合は?(後編)

電通調査の問題点

日本におけるLGBTの割合については、電通ダイバーシティ・ラボによる「7.6%」(2015年調査)や「8.9%」(2018年調査)という数値がしきりに用いられてきました(以下、「電通調査」)。

ここでは、電通調査の問題点を指摘してみたいと思います。


● 調査対象が無作為抽出ではなく、登録モニターに対する「インターネット調査」で、‟希望者のみが回答しているため、「全人口の割合」として表現するのは不適切


● 対象から60歳以上の高齢者が除外されており、「インターネット調査」に協力しやすい20~40代に偏っていると推測される


● 調査の主体である電通ダイバーシティ・ラボはマーケティング会社であり、LGBTの市場開拓を目的としている


さらに、2015年に行われた調査でのLGBTの内訳は、

L(レズ):0.5%

G(ゲイ):0.9%

B(バイセクシャル):1.7%

T(トランスジェンダー):0.7%


となっており、LG(同性愛者)だけでは1.4%、「LGBT」に広げても3.8%ですが、ここにアセクシャル(無性愛者)などの「その他」3.8%を加えることで、「7.6%」という数字が導き出されているのです。


ちなみに名古屋市が2018年7月に無作為抽出で実施した「性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)など性別にかかわる市民意識調査」では、「性的少数者である」と回答したのは「1.6%」でした。


また、19年1月に国立社会保障・人口問題研究所のチームが、大阪市の協力を得て無作為抽出で実施した「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」では、LG(同性愛者)が0.7%、B(両性愛者)が1.4%、Tが0.75%で、重複分を除くと「LGBT」は「2.7%」という結果でした。


上記の名古屋市と大阪市での調査結果、そして電通調査の問題点を踏まえると、電通調査による「7.6%」「8.9%」という割合は、かなり誇張されたものだと評価せざるを得ません。少なくとも、そのまま政策や条例などを策定するうえでの根拠とすべきではないでしょう


今年(21年)は、3年おきに実施されてきた電通調査がまた行なわれる予定で、その調査結果は大々的に報道され、改めて世間の注目を集めるはずです。これまでの経過を見ると、今回はその割合が「10%」を超えることも予想されますが、本記事の指摘を踏まえ、冷静に受けて止めていただけることを願っています。

さらに今後、公的機関などによる、より実証的で信頼に足る調査の実施を期待いたします。


【参考資料】

電通による「LGBT調査2015」

電通による「LGBT調査2018」

名古屋市による市民意識調査

大阪市での調査

Fair Space (フェア・スペース)

LGBTなどに関するフェアな情報サイト