日本全国のLGBTの割合は?(前編)

電通調査とパートナーシップの利用者数とのギャップが大きすぎる

日本におけるLGBTの割合について、電通ダイバーシティ・ラボによる「7.6%」(2015年調査)や「8.9%」(2018年調査)という数値がしきりに用いられてきました。しかし、この電通調査と現実に表れた同性パートナーシップ制度の公布件数との間に、あまりにも大きなギャップがあります。


実は、性的マイノリティに関する調査研究などを紹介するウェブサイト「NIJI BRIDGE」でも、「現在、日本全国でLGBTの割合を調べた学術的に信頼性のあるデータはまだ存在しません。広告代理店による8%等の割合は、ウェブ会社の登録モニタを対象とした調査による数値である点に留意する必要があります」と指摘しています。

つまり、あくまでも一企業の登録モニターの中での数字であり、「全人口の割合」と言い切ることはできないということです。


ちなみに、実際に同性パートナー制度を必要とする当事者の割合を推定するために、渋谷区と渋谷区認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」共同による同性パートナーシップ制度の全国調査の数字を見てみましょう。そこでは、パートナーシップ制度を導入した自治体は、2021年1月8日時点で「74自治体」。公布件数は、2020年12月31日時点で「1,516組」となっています。

1月8日時点で人口カバー率が「33.4%」ということですから、将来的に全人口がカバーされた場合、現状の公布件数「1,516組」を単純に3倍にすると、4,548組・9,096人となります。


これを男女の婚姻件数と比較してみましょう。

コロナ禍前の2019年の年間婚姻件数(概数)は59万8,965組。したがって、全国で同性パートナーシップ制度が施行された場合の交付件数の割合(推計値)は、男女の年間婚姻件数の0.76%(4,548組÷59万8,965組)となります。

この「0.76%」という割合は、電通ダイバーシティ・ラボなどが喧伝するLGBTの割合「7.8%(2015年の調査)」や「8.9%(2018年の調査)」と比較すると、明らかに低過ぎます。さらに男女の婚姻数は年間の数ですが、同性パートナーシップの交付件数は、数年間の累計であり、実際の割合はさらに低下するでしょう


もちろん、同性愛者や両性愛者(LGB)が皆、パートナーシップ制度を申請する訳ではありません。また、現在の制度ではカミングアウトを強いられる割には、中途半端であまり有効でないと主張する当事者もいます。

しかし、仮に人口の「1%」がLGBだとすると125万5千人ものLGBが存在することになり、そのうちの1割(10人に1人)がパートナーシップ制度を申請するだけでも、6万2,800組(12万5千人)もの数になります。

それが人口カバー率3割の時点で、「1,516組」とはあまりにも少な過ぎるという印象です。


後編では、電通ダイバーシティ・ラボが実施した調査の問題点などについて考えます。

後編につづく


【参考記事】

地方自治体の同性パートナー認知件数(2020年12月31日時点)

Fair Space (フェア・スペース)

LGBTなどに関するフェアな情報サイト